米国パラメディック研修報告

 2回目の米国パラメディック研修に行ってまいりました。当院では民間の施設として5名の救急救命士を採用しています。救急病院のERでたくさんの救急車を受けていたころから、「患者さんを病院に連れてくる前に、救命士さんが現場でもっと医療技術が使えていたら、患者さんはもっとよりよく回復するのに」と思っていました。民間の救命士が活躍し、救命士が現場で大活躍する米国の救急医療にはずっと興味がありました。

 この研修では、実際にアメリカの救命士さんたちと一緒に救急車に乗り、一緒に患者さんをケアします。彼らは、20数種類の救急薬を使いこなし、気管内挿管をし、点滴をし、ERで医師がするようなことを現場の救急車内で行います。

 でも、そう思うと、軽症の患者さんにも、暖かい毛布をかけてあげたり、「患者さんが喜ぶんだ」と言って、救急車の中を一生懸命きれいに掃除したり消毒したりします。軽症のホームレスの人にも暖かい言葉をかけてあげ、半分以上の人が保険をもっていないけど、「関係なく、すべての患者さんをケアするんだ」と強い使命感をもって仕事をしています。

 どの救命士さんや学生さんに「何で救命士になりたかったの?」と聞いても、全員が「TO HELP PEOPLE (人を助けるためだよ)」とはっきり答えてくれます。

 また、救命士と看護師、医師はとても仲がよく、民間の救命士と公共の消防局の救命士は互いに仲良く協力しあって仕事をしています。全米を網羅する民間のAMRという救急車の民間会社は、地域の救急医療サービス、一般の人たちの教育、事故予防のための啓蒙活動など、本来行政がやるべきことをもちろん補助金ももらわないで、むしろ、税金を払ってやっているのに、少しもおごるところがありません。一人一人が使命感をもって仕事をしています。国の人たちを支える偉大な会社だな、と尊敬し、私たちスマイルこどもクリニックも、もっとがんばらなければ、と励まされました。

 この研修は夜は、アメリカの救命士さんたちとパーティーをし、互いを理解しあい、尊敬を深めあいます。彼らは日本の医療関係者が日本の救急医慮をよりよくしたいと思う気持ちに強く共感してくれます。(ちなみに私は17歳に見える、と言ってもらい、喜んでいました。実際には11歳と9歳の子持ちです。)

 私たち日本人も、医師や看護師、救命士、薬剤師、クラーク、あらゆる医療関係者が、その職種を越え、民間とか医師会とか公立病院とかその枠を越え、「患者さんを助ける」という同じ唯一の目的にむかって仲良く協力しあえば、自ずと、医療は変っていくと、希望を持ちました。

 そして、今、世界では戦争や飢餓など憎しみや絶望のただ中にいる人たちが現に今も無数にいます。でも自分が今まで出会った世界の人たちはその国がどのような状況であっても、一人一人はみんな共通する良心をもっています。・・・アメリカの救命士さんたちの「人を助けたい」とおおらかに話してくれる笑顔、自国の子供たちを救うために命がけで日本へやってきたイラクの女医さん、支援にきたはずの私に貧しいはずの痩せた小さなストリートチルドレンがぼろぼろの日傘をさしてくれた、その心の豊かさ、日本のNGOの人たちやボランティアの人たちがその命や人生を賭して人や地球のために働く姿・・・・・・みんなその根底に「HELP PEOPLE」の精神をもっています。国や立場はちがっても共通するみんなの良心を思うと、世界は必ずよい方向に向かうと思えてなりませんし、その光に満ちた方向へ向かわせることが、極東アジア、日出ずる国、日本に生まれた私たちの使命に思えてなりません。もちろん、こどもたちの未来のために。

                         2004年11月 加藤ユカリ